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小物・薄板の精密板金加工、試作加工 (有)長井技研
山形県長井市の町工場
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資料館(公差)
>> 3.公差・幾何公差関連JIS規格概要 - その他の公差関連規格
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●幾何公差を指示する際のデータムについて
引用元 :
JIS B 0022:1984 幾何公差のためのデータム |
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- JIS B 0022:1984 幾何公差のためのデータム − Datums and datum-systems for geometrical tolerances
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1.適用範囲
この規格は、幾何公差を指示するときに用いるデータム及びデータム系の図示方法及び設定方法について規定する。
引用規格:
- JIS B 0021 幾何公差の図示方法
- JIS B 0621 幾何偏差の定義及び表示
国際対応規格:
ISO 5459 Technical drawings - Geometrical tolerancing - Datums and datum-systems
for geometrical tolerances
関連規格:
ISO/DIS 1101 Technical drawings - Geometrical tolerancing - Tolerancing
of form, orientation, location and run-out - Generalities, definitions,
symbols, indications on drawings
ISO 1101/U Technical drawings - Tolerances of form and of position - Part
U : Maximum material principle
2.用語の意味
この規格で用いる主な用語の意味は、JIS B 0021(幾何公差の図示方法)、JIS B 0621(幾何偏差の定義及び表示)によるほか、次による。
- (1) データム
- 関連形体に幾何公差を指示するときに、その公差域を規制するために設定した理論的に正確な幾何学的基準(図1)。
- 例えば、この基準が点、直線、軸直線、平面及び中心平面の場合には、それぞれデータム点、データム直線、データム軸直線、データム平面及びデータム中心平面と呼ぶ。
図1
- (2) データム形体
- データムを設定するために用いる対象物の実際の形体(部品の表面、穴など)(図1)。
- 備考:
- データム形体には、加工誤差などがあるので、必要に応じてデータム形体にふさわしい形状公差を指示する。
- (3) 実用データム形体
- データム形体に接してデータムの設定を行う場合に用いる、十分に精密な形状をもつ実際の表面(定盤、軸受、マンドレルなど)(図1)。
- 備考:
- 実用データム形体は、加工、測定及び検査をする場合に、指示したデータムを実際に具体化したものである。
- (4) 共通データム
- 二つのデータム形体によって設定される単一のデータム。
- (5) データム系
- 公差付き形体の基準とするために、個別の二つ以上のデータムを組み合わせて用いる場合のデータムのグループ。
- (6) データムターゲット
- データムを設定するために、加工、測定及び検査用の装置、器具などに接触させる対象物上の点、線又は限定した領域。
3.記号
データム及びデータムターゲットの記号は、表1 のとおりとする。
表1 データム及びデータムターゲットの記号
事項 |
記号(1) |
参照項目 |
データムを指示する文字記号 |
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5. |
データム三角記号(2) |
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5. |
データムターゲット記入枠 |
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6. |
データムターゲット記号 |
点 |
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6. |
線 |
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領域 |
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注(1) 文字記号及び数値は、一例を示す。
注(2) JIS B 0021 参照。
4.データム又はデータム系を指示する場合の基本的事項
- 4.1 単一のデータムによる指示
- 姿勢公差、振れ公差などは、一般に単一のデータムと関連して指示する。
- 4.2 三平面データム系による指示
- 位置公差は、一般に互いに直交する三つのデータム平面と関連して指示する。これらの三平面によって構成されるデータム系を、三平面データム系という。この場合、データムの一義性を考慮してデータムの優先順位を定めて指示する。三平面データム系を構成するデータム平面は、その優先順位に従ってそれぞれ第一次データム平面、第二次データム平面及び第三次データム平面という(図2)。
- これらのデータムに対応する実用データム形体は、それぞれ第一実用データム平面、第二実用データム平面及び第三実用データム平面という(図3)。
- 備考:
- 円筒状の対象物に三平面データム系を適用する場合には、軸直線を含む互いに直交する二平面と、軸直線に直交する一平面とで三平面を構成する(図4)。
図2
図3
図4
5.データム及びデータム系の図示方法
- 5.1 データムを指示するための図示方法
- データムを指示するためのデータム記号の表し方は、次による。
- (1) データム三角記号の付け方
- データム三角記号の付け方の詳細は、JIS B 0021 による(図5、図6)。
図5
図6
- (2) 文字記号によるデータムの示し方
- 文字記号によるデータムの示し方の詳細は、JIS B 0021 による(図7)。
図7
- 5.2 公差記入枠へのデータム文字記号の記入方法
- データム記号によって指示したデータムと公差との関連を表すために、公差記入枠にデータム文字記号を記入する方法は、次による。
- 備考:
- 公差記入枠の左から一番目及び二番目の区画中の記入については、JIS B 0021 による。
- (1) 一つのデータム形体によって設定するデータム
- データムを一つの形体によって設定する場合には、そのデータムは公差記入枠の左から三番目の区画の中に指示する(図8)。
図8
- (2) 二つのデータム形体によって設定する共通データム
- 一つのデータムを二つの形体によって設定する場合には、そのデータムは、ハイフンで結んだ二つの文字記号によって公差記入枠の左から三番目の区画の中に指示する(図9)。図示例を
図10 に示す。
図9
図10
- (3) 二つ以上のデータムによって設定するデータム系
- 二つ以上のデータムを組み合わせて設定するデータム系の場合には、それらのデータムは、公差記入枠の左から三番目以降の区画の中に優先順位に従って記入する(図11)。図示例を
図12 に示す。
図11
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図12a |
図12b |
備考:
データムを指定する場合の順序は、図13 のように公差に大きな影響を及ぼすので注意する必要がある。図示例を 図14 に示す。
(a) 図12(a)の場合
A:第一次データム
B:第二次データム
C:第三次データム |
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(b) 図12(b)の場合
A:第一次データム
B:第二次データム
C:第三次データム |
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図13 |
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図14
6.データムターゲットの図示方法
- 6.1 データムターゲットを指示する場合の基本的事項
- データム形体が面である場合には、その面が理想的な形状と大きく異なることがある。この場合、全表面をデータム形体として指示すると、加工、検査などのときの測定に大きな誤差を生じたり、また、繰返し性・再現性が悪くなることがある(図15
及び 図16)。これを防止するために、データムターゲットを指示する。
図15
図16
備考:
データムターゲットを指示する場合、形体の全表面をデータムとする代わりに、幾つかの限定したデータムターゲットだけで指示することによって、部品の機能を損なうかどうかを検討しておく必要がある。
この場合には、形状偏差及び位置偏差の影響を考慮しなければならない。
- 6.2 データムターゲットを図示する場合に用いる記号
- データムターゲットの図示は、次のデータムターゲット記入枠、文字記号及びデータムターゲット記号による。
- (1) データムターゲット記入枠及び文字記号
- データムターゲットは、横線で二つに区切った円形の枠(データムターゲット記入枠)によって図示する。データムターゲット記入枠の下段には、形体全体のデータムと同じデータムを指示する文字記号及びデータムターゲットの番号を表す数字を記入する。上段には、補足事項(例えば、ターゲットの大きさ)を記入する[図17(a)]。補足事項がデータムターゲット記入枠の中に記入しきれない場合には、枠の外側に表示し、引出し線で枠と結ぶ[図17(b)]。
- データムターゲット記入枠は、矢印を付けた引出し線でデータムターゲットを指示する記号(以下、データムターゲット記号という。)と結ぶ。図示例を
図21、図22 に示す。
図17
- (2) データムターゲット記号
- データムターゲット記号は、表2 による。
表2 データムターゲット記号
用途 |
記号 |
備考 |
データムターゲットが点のとき |
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太い実践の×印とする。 |
データムターゲットが線のとき |
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二つの×印を細い実線で結ぶ。 |
データムターゲットが領域のとき |
円の場合 |
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原則として、細い二点鎖線で囲み、ハッチングを施す。
ただし、図示が困難な場合には細い二点鎖線の代わりに
細い実線を用いてもよい。 |
長方形の場合 |
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備考1. データムターゲット記号は、データムターゲットを図示した表面がわかりやすい投影図に示す。
備考2. データムターゲットの位置は、主投影図に図示するのがよい(図18、図19、図20)。
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点の
データムターゲット
図18 |
領域の
データムターゲット
図19 |
全体が見えるように
図示した線の
データムターゲット
図20(a) |
側面の縁に
図示した線の
データムターゲット
図20(b) |
- 6.3 データムターゲットの図示例
- データムターゲットの図示例を 図21 及び 図22 に示す。
図21
備考:
データムターゲット A1、A2、A3 によってデータムA を設定する。
データムターゲット B1、B2 によってデータムB を設定する。
データムターゲット C1 によってデータムC を設定する。
図22
備考:
データムターゲット A1、A2、A3 によってデータムA を設定する。
データムターゲット B1、B2 によってデータムB を設定する。
データムターゲット C1 によってデータムC を設定する。
7.形体グループをデータムとする指示
複数の穴のような形体グループの実際の位置を他の形体又は形体グループのデータムとして指示する場合には、図23
のように公差記入枠にデータム三角記号を付ける。
図23
備考1.この図示例は、八つの穴を ”データムD” として指定している。
備考2.六つの穴の位置度公差は、機能ゲージを用いて検査するとよい。
8.データムの設定
データム形体として指定された形体には、加工工程で、ある程度の誤差が生じることは避けられない。その形体は、凸面状、凹面状、円すい状などのような形状となることがあるが、このような形体に対してデータムを設定する方法の例を次に示す。
- (1) 直線又は平面のデータム
- 直線又は平面をデータムとして指示した場合、データム形体を実用データム形体との最大間隔が可能な限り小さくなるように置いてデータムを設定する。データム形体が実用データム形体に対して安定している場合には、そのままの状態でデータムを設定する(図1参照)。データム形体が実用データム形体に対して不安定な場合には、このすき間が安定するように適当な間隔をとって支えを置き、データムを設定する。この場合、線のデータム形体に対しては2個の支え(図24)を、平面のデータム形体に対しては3個の支えを用いる。
図24
- (2) 円筒軸線のデータム
- 円筒の穴又は軸の軸線をデータムとして指示した場合、このデータムは穴の最大内接円筒の軸直線又は軸の最小外接円筒の軸直線によってを設定する。
- データム形体が実用データム形体に対して不安定な場合は、この円筒をどの方向に動かしても移動量が等しくなるような姿勢に設定する(図25)。
図25
- (3) 共通データム
- 共通軸直線又は共通中心平面のデータムは、別々のデータム形体に対して、共通の実用データム形体によってデータムを設定する。実用データム形体である二つの最小外接同軸円筒の軸直線によって設定した共通軸直線のデータムの例を
図26 に示す。
図26
- (4) 円筒の軸線で平面に垂直なデータム
- データムA は、データム形体A に接する平らな平面によって設定する。データムB
は、データムA に垂直でデータム形体B に内接する最大円筒の軸直線によって設定する(図27)。
図27
備考: この例では、データムA が第一次データム、データムB が第二次データムである。
9.データムの適用
データム及びデータム系は、関連する形体の間に幾何学的関係を設定するための基準として用いる。
相互に関連したデータム形体及び実用データム形体の精度は、機能上の要求に対して十分でなければならない。そのためデータム形体には、形状公差を指定することが望ましい。
データムの図示方法、また、その指定したデータムのデータム形体及び実用データム形体によってそのデータムを設定する方法の例を付表に示す。
付表 データムの設定例
データムの図示 |
データム形体 |
データムの設定 |
1.データム - 点 (1.1 球の中心) |
付表図1.1(a) |
付表図1.1(b) |
付表図1.1(c) |
1.データム - 点 (1.2 円の中心) |
付表図1.2(a) |
付表図1.2(b) |
付表図1.2(c) |
1.データム - 点 (1.3 円の中心) |
付表図1.3(a) |
付表図1.3(b) |
付表図1.3(c) |
2.データム - 線 (2.1 穴の軸線) |
付表図2.1(a) |
付表図2.1(b) |
付表図2.1(c) |
2.データム - 線 (2.2 軸の軸線) |
付表図2.2(a) |
付表図2.2(b) |
付表図2.2(c) |
3.データム - 平面 (3.1 部品の表面) |
付表図3.1(a) |
付表図3.1(b) |
付表図3.1(c) |
3.データム - 平面 (3.2 部品の二つの表面の中心平面) |
付表図3.2(a) |
付表図3.2(b) |
付表図3.2(c) |
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